「未経験からタクシー運転手になって、本当に稼げるのか」は、転職を考え始めた人の多くがまず気になる点だ。
結論から言えば、未経験タクシー運転手の収入は入社直後からずっと同じ水準ではなく、研修期間・給与保障期間・歩合制への移行という段階を経て変わっていく。
この記事では、未経験からタクシー運転手になった場合、1年目の収入がどう推移していくのかを、公的な統計も交えながら段階ごとに整理して解説する。

「稼げるかどうか」は、入社した日に決まるわけじゃない。どこでつまずきやすくて、どう備えればいいのか——それを知っているかどうかで、1年目の景色はだいぶ変わるぞ。
- 研修中や給与保障期間中の収入の目安
- 給与保障が終わったあとに起こりうる「収入の谷間」と、その備え方
- 公的統計で見る1年目の年収水準と、会社選びで確認しておきたいポイント
1.未経験からタクシーに転職して「本当に稼げるのか」
タクシー運転手の給与体系は、売上の一定割合が給与になる歩合制が中心である。
売上が増えればその分収入も増える仕組みである一方、未経験のうちは地理や営業のノウハウが身についておらず、思うように売上を伸ばせない時期があるのも事実だ。
だからこそ多くのタクシー会社では、未経験者が安心してスタートできるよう、研修期間や給与保障期間といった仕組みが用意されている。
つまり「稼げるかどうか」は、入社した瞬間に決まるものではなく、時間の経過とともに変化していくものだと捉えるのが実態に近い。
次の章からは、その変化を段階ごとに見ていこう。
2.入社直後〜研修期間中の収入はどうなる?
入社してから実際に営業を始めるまでの間、収入がどんな形で支払われるのかを、研修と二種免許の取得に分けて見ていく。
研修期間の目安と日当
入社してすぐに乗務を始められるわけではない。
多くのタクシー会社では、接客マナーや安全運転、車両操作、無線対応などを学ぶ研修期間が設けられており、その長さは会社によって異なる。
この研修期間中は、まだ自分で売上を上げているわけではないため、歩合給ではなく、固定の日当が支払われる会社もある。
研修中の日当は会社によって幅があり、一律の金額を保証するものではない。
求人票を確認する際は「研修期間は何日程度か」「その間の給与形態はどうなっているか」を具体的に確認しておくと、入社後のギャップを減らせる。
二種免許取得にかかる期間と費用負担の一般的な傾向
二種免許については、受験するための条件と、取得にかかる費用・教習期間中の収入の2点を押さえておきたい。
二種免許の受験資格
タクシー運転手として営業するには、第二種運転免許(二種免許)が必要だ。
受験資格は、原則として21歳以上で、普通免許などを受けていた期間が通算3年以上あることとされている。
ただし2022年5月13日からは、教習所で「受験資格特例教習」を修了すれば、19歳以上・普通免許などの保有期間が通算1年以上で受験できる特例が設けられている。
普通免許を持っていても、保有期間によっては特例教習が必要になるため、自分が条件を満たしているかを事前に確認しておこう。
出典:警察庁「第二種免許等の受験資格の見直しについて」/長野県警察「受験資格特例教習について」
費用負担と教習期間中の収入
多くのタクシー会社では、入社後の教習によって二種免許の取得をサポートしており、取得費用を会社が負担してくれるケースも少なくない。
ただし、費用負担には「入社後一定期間は勤務を続けること」といった条件が付いている場合もあるため、条件の詳細は事前に確認しておくとよいだろう。
教習期間中も、研修と同様に固定の日当や手当が支給される会社がある。
この期間はまだ本格的な営業収入が発生していないため、「いつから歩合給が始まるのか」を採用担当者に確認しておくと、収入のイメージを持ちやすくなる。
3.給与保障期間中の月収の目安
乗務を始めたばかりの時期を支える給与保障制度について、仕組みと会社ごとの違いを確認しておこう。
給与保障制度とはどんな仕組みか
給与保障は「あれば安心」で終わらせず、中身まで見ておきたい制度だ。基本の仕組みと、見落としやすい適用条件に分けて整理する。
売上にかかわらず一定額が支払われる仕組み
研修や免許取得を終えて乗務を始めた後も、すぐに売上が安定するとは限らない。そこで多くのタクシー会社が設けているのが「給与保障制度」だ。
これは、入社後の一定期間、実際の売上にかかわらず、あらかじめ決められた金額を給与として支払う仕組みである。
歩合給だけに頼ると、地理に不慣れな新人ドライバーは収入が不安定になりやすい。
この制度によって、生活の土台を確保しながら経験を積めるようになっている。
保障額だけでなく適用条件も確認する
保障される金額や、歩合給との関係(保障額を上回った分だけ歩合給が上乗せされるのか、保障額そのものが歩合給の一部として扱われるのか)は、会社ごとに設計が異なる。
さらに、当社の転職支援者によると、保障給には「〇ヶ月間限定」「勤務日数〇日以上」といった適用条件が設けられているケースがあるそうだ。
条件を満たさないと、想定していた保障額を受け取れない可能性もある。入社後に「聞いていた保障給がもらえない」とならないよう、求人票を見る際は金額とあわせて適用条件まで確認しておくと安心だ。
保障額・保障期間は会社によって大きく異なる
給与保障の期間は、数ヶ月程度に設定している会社もあれば、より長い期間を設けている会社もあり、幅がある。
保障される金額についても同様で、一律の相場があるわけではない。
「未経験でも安心」と打ち出している求人であっても設計は会社によって大きく異なるため、複数の求人を比較する際は、保障の条件を横並びで確認することが欠かせない。
あわせて確認しておきたいのが、保障期間が終わったあとの給与体系だ。保障期間はあくまで「一時的な下支え」であり、その後は歩合給が収入の中心になっていく。
保障期間の長さは、歩合給に慣れるまでの猶予期間の長さでもある。
4.給与保障が終わったら?歩合制への移行と「収入の谷間」
保障が外れたあとに何が起きやすいのか、そしてどう備えればいいのかを順番に見ていく。
完全歩合制へ移行するタイミング
給与保障期間が終わると、多くの場合、収入は実際の売上に応じた歩合給が中心になっていく。
保障期間中から少しずつ歩合の割合を増やしていく段階的な移行を採用している会社もあれば、保障期間終了と同時に完全歩合へ切り替わる会社もある。
どちらの方式でも、「保障されていた収入」から「自分の売上次第の収入」へと軸足が移る点は共通している。
この移行のタイミングこそが、収入面で最も意識しておきたい分岐点だ。
「収入の谷間」が生まれる理由
給与保障が終わった直後は、地理や効率的な営業の仕方がまだ十分に身についておらず、売上が伸び悩んで収入が一時的に落ち込む「谷間」が生じやすい時期だ。
この谷間は、努力不足というよりも、経験を積む過程で通りうる段階だと捉えることができる。
あらかじめ知っておくかどうかで、心構えや家計の備え方は大きく変わってくる。
収入の谷間への備え方(生活防衛資金の考え方)
谷間への備えは、「いつ谷間が来そうか」を見積もることと、「その間の生活費をどう確保するか」を決めることの2段階で考えると整理しやすい。
保障期間と立ち上がりの時期を重ねて見積もる
まず把握したいのは、入社する会社の給与保障期間の長さと、その適用条件だ。
当社の転職支援者によると、入社直後は土地勘や配車アプリの使い方、稼げる時間帯・エリアの把握に時間がかかるため、最初の1〜2ヶ月は稼働率が上がりにくいという。
保障期間がこの立ち上がりの時期をどこまでカバーしているか、勤務日数などの適用条件を無理なく満たせそうかを照らし合わせてみよう。
そうすると、保障が外れたあとに収入が落ち込みやすい時期の見当をつけやすくなる。
生活費の備えは家計に合わせてシミュレーションする
保障期間と、保障が終わったあとに収入が安定するまでにかかりそうな期間を合わせて考え、その間の生活費をどう確保するかを、転職前に一度シミュレーションしておくとよいだろう。
具体的にいくら用意すべきかという一律の目安を示すのは難しく、家族構成や固定費によって必要な金額は人それぞれ異なる。
大切なのは「保障期間が終わればすぐに以前と同じ、あるいはそれ以上の収入になる」と楽観的に捉えすぎず、数ヶ月単位で収入が変動する可能性を織り込んでおく姿勢だ。
一人で転職活動を進めるのに迷ったら、ドライバー専門の転職エージェントを頼ってみるのも一つの手だ。
ドライバー業界特有の慣習や各社の実態に詳しい専任のエージェントが、転職活動をサポートしてくれる。
▶カラフルエージェント ドライバーへのお問い合わせはこちら
5.公的統計で見る1年目の年収水準
公的な統計を見るときは、「全ドライバーの平均」と「経験の浅い層の数字」を分けて読むのがポイントだ。
タクシー運転者の全国平均年収の推移
タクシー運転者の全国平均年収は、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、令和7年時点で451万円となっている。
令和6年の415万円から8.7%増えており、全産業の伸び率(3.5%)を上回った。
一方、全産業労働者の平均は令和7年で約546万円であり、タクシー運転者の平均はその8割強の水準にある。
ただし、この平均年収は年齢や勤続年数を問わない全ドライバーの平均値であり、未経験1年目の収入をそのまま示す数字ではない。
経験年数別に見た1年目の水準
全国ハイヤー・タクシー連合会が同調査の令和7年分をまとめた資料では、経験年数別の年間推計額も示されている。
経験年数0年は371万円、1〜4年は418万円であり、経験の浅い層は全体平均(451万円)を下回るものの、0年から1〜4年にかけて水準が上がっていることが読み取れる。
なお、経験年数5〜9年は407万円、10〜14年は392万円であり、経験年数が長いほど年収が上がり続けるわけではない。年齢構成や勤務形態の違いも影響していると考えられる。
また、この推計額は6月分の月間給与を12倍し、年間賞与を加えて算出した値であり、実際の収入は会社ごとの給与保障や歩合の条件によって異なる。
全国平均は「1年目からすぐに届くべき目標」ではなく、「経験を積みながら近づいていく水準」と捉えておくと、過度な期待も過度な不安も避けやすくなる。
出典:一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」
6.未経験でも収入を伸ばしていくためにできること
ここからは、収入を伸ばしていくための具体的な動き方を見ていく。いずれも日々の乗務の中で積み上げていけるものだ。
時間帯・エリアの情報収集
どの時間帯にどのエリアで乗客が多くなりやすいかを把握しておくことは、効率的に売上を積み上げるうえで役立つ。
たとえば朝の通勤時間帯はオフィス街や駅周辺、夜間は繁華街や終電を逃した利用者が多いエリアなど、時間帯ごとの傾向を意識して走ることで、空車のまま走行する時間を減らせる可能性がある。
こうした情報は、一朝一夕に身につくものではない。
日々の乗務を通じて少しずつ蓄積していくものであり、未経験のうちから焦ってすべてを覚えようとする必要はない。
付け待ちと流しの使い分け
タクシーの営業スタイルには、街中を走りながら乗客を探す「流し」と、駅やホテルなどのタクシー乗り場で待つ「付け待ち」がある。
流しは乗客を探しに行ける一方で体力的な負担が大きくなりやすく、付け待ちは待機時間が発生しやすい一方で確実性がある。
状況に応じて2つをバランスよく使い分けることが、無理なく売上を積み上げるコツとして挙げられる。
近年は配車アプリの普及により、アプリからの依頼を受けながら流しや付け待ちを組み合わせるスタイルも広がっており、地理に不慣れな時期の心強い補助になり得る。
先輩ドライバーや研修のノウハウを吸収する
営業所には、経験の中で蓄積された「稼ぎやすいルート」や「乗客を見つけやすいスポット」といったノウハウを持つ先輩ドライバーがいることが多い。
自己流にこだわらず、先輩や運行管理者に積極的に質問し、実践で得られた知見を吸収していく姿勢は、収入を伸ばすスピードに影響する。
会社によっては、入社後も定期的な研修や勉強会を用意しているところがある。こうした制度を積極的に活用することも、収入の谷間を早く抜け出すための一つの手段になる。
7.会社選びで確認しておきたい収入に関わるポイント
最後に、会社を選ぶときに確認しておきたいポイントを挙げておく。求人票の打ち出し文句だけで決めず、面接の場で具体的に確認しておきたい。
給与保障の額・期間を確認する
「未経験歓迎」「給与保障あり」といった打ち出し方だけで判断せず、3章で見た金額・期間・適用条件・保障が終わったあとの給与体系を、求人票と面接で確認しておこう。
歩合率と手数料負担の有無を確認する
求人票で「歩合率60%」のように高い数字を目にすると、その数字だけで収入をイメージしてしまいがちだ。
しかし、無線利用料やキャッシュレス決済の手数料、燃料費などが自己負担となっている会社では、額面の歩合率から差し引かれる分があり、手取りベースの「実質歩合率」は表面上の数字より低くなることがある。
面接で「手数料や燃料費の自己負担はありますか」と質問し、歩合率と負担する費用をセットで確認しておくと、入社後に「思っていたより手取りが少ない」という戸惑いを減らせる。
足切り制度の有無を確認する
一定の売上に達しないと歩合率が下がる「足切り」と呼ばれる制度を設けている会社もある。有無や基準は収入の下限を左右するため、面接時に確認しておくと安心だ。
| 確認したいポイント | なぜ重要か |
|---|---|
| 研修期間の長さと期間中の給与形態 | いつから歩合給が始まるかの目安になる |
| 給与保障の金額・期間・適用条件 | 収入の谷間の長さ・深さに直結する |
| 歩合率と手数料負担の有無 | 額面と実質手取りのギャップを把握できる |
| 足切り制度の有無・基準 | 売上が伸び悩んだ月の収入の下限に関わる |
なお、当社の転職支援者によると、給与が上がっても、拘束時間や休みの取りやすさ、人間関係が合わずに長続きしなかったケースもあるそうだ。働き方全体もあわせて確認しておきたい。
8.未経験のタクシー運転手が感じるよくある疑問
-
タクシーで1日いくら稼げますか?
-
1日(1乗務)の収入は、その日の営業収入に歩合率を掛けた額が目安となるため、一律の金額を示すことはできない。
勤務形態によっても変わり、全国ハイヤー・タクシー連合会の資料でも、隔日勤務や深夜勤務は売上が高い勤務形態として触れられている。
求人票や面接では、1乗務あたりの想定営業収入と月の乗務回数をセットで確認すると、月収のイメージをつかみやすい。
-
タクシーで5万円売り上げたらいくらもらえますか?
-
受け取れる金額は「売上×歩合率」で計算するのが基本的な考え方だ。たとえば歩合率が60%の会社であれば、5万円の売上に対して単純計算で3万円が歩合給の目安になる。
ただし歩合率や費用負担の条件は会社によって異なるため、あくまで計算の考え方として捉え、実際の金額は求人票や面接で確認してほしい。
-
タクシーで月収50万円稼ぐには?
-
全国ハイヤー・タクシー連合会の資料によると、令和7年のタクシー運転者の月間給与(6月分、超過労働手当などを含む)の全国平均は35.9万円だ。
月収50万円はこの平均を大きく上回る水準であり、経験を積んで売上を伸ばした先の目標と考えるのが現実的だ。
1年目の目安とは切り分け、まずは時間帯・エリアの把握や営業スタイルの使い分けなど、売上を積み上げる土台づくりから始めたい。
9.まとめ|未経験タクシーの収入は「段階」で変わっていく
未経験からタクシー運転手になった場合の収入は、研修、給与保障、歩合制への移行という段階を経て変わっていく。
最初から全国平均の水準に届くとは限らないが、仕組みを知って備えておけば、1年目の不安は小さくしやすくなる。
この記事のポイント
- 1年目の収入は「研修中の日当→給与保障→歩合制」と段階的に変わる
- 保障明けの「収入の谷間」は、保障期間・適用条件と生活費の見積もりで備えられる
- 会社選びでは、保障の条件・実質歩合率・足切り制度をセットで確認する



…まあ、そんなもんだ。最初から満額稼げる奴なんていない。段階を踏んで、自分の流儀を見つければいい。








