「特措法」って言葉をニュースや求人で見かけて、何のことかと調べ始めた――そんなところじゃないか。
タクシー特措法とは、ひとことで言えば「タクシーが多すぎる地域で、台数や運賃に枠をはめる法律」だ。
業界ニュースで見かける「準特定地域」「減車」も、この法律から来ている。
この記事では、法令や国土交通省の資料をもとに、仕組みと自分の地域の調べ方を整理する。
名前は長いが、押さえるのは「どこで・何が・どう縛られるか」の3つだけだ。自分の営業区域の話として読んでみてくれ。

読み終わるころには、業界ニュースの見え方が少し変わっているはずだ。
- タクシー特措法の正式名称と目的、混同されやすい別の法律との違い
- 特定地域と準特定地域の違い、制限される内容、公定幅運賃、独占禁止法の適用除外
- いまの指定状況(令和8年10月現在)の調べ方と、ドライバーや転職希望者に関係する点・しない点
1.タクシー特措法とは?正式名称と似た法律との違い
まず名前の整理からだ。似た名前の法律が2つあるので、ここを間違えると話が全部ずれる。
正式名称と成り立ち
タクシー特措法の正式名称は、「特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」だ。
正式名称は長いので、分解してみる。
「一般乗用旅客自動車運送事業」とは、道路運送法で定められたタクシー・ハイヤーの事業のことだ。
つまり「特定地域と準特定地域で、タクシー事業を健全にし、活気づけるための特別な法律」という意味になる。
法令番号は平成21年法律第64号で、2009年に公布された。
できた当初は「特定地域」だけが対象だった。2013年11月27日公布の改正法(平成25年法律第83号)で、一段階手前の「準特定地域」が加わり、2014年1月に施行された。
名称に「準特定地域」が入っているのは、このためだ。
出典:e-Gov法令検索「特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」/衆議院「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等の一部を改正する法律」
資料によって異なる呼び方
同じ法律でも、資料によって呼び方が違う。
2009年の制定時、国土交通省の資料では「タクシー適正化・活性化法」と呼ばれていた。2013年の改正後の資料では「改正タクシー特措法」と表記されている。
「タクシー措置法」と書かれることもあるが、正しくは「特別措置法」だ。
迷ったら、名前に「特定地域」「準特定地域」「活性化」が入っているかを見ればいい。入っていれば、この記事で扱う法律の話だ。
出典:国土交通省「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法(平成21年法律第64号)について」
タクシー業務適正化特別措置法との違い
名前がよく似た法律が、もう1つある。何が違うのかを、表と改正の経緯から確認しておく。
目的と対象の違い
「タクシー特措法」で検索すると、「タクシー業務適正化特別措置法」という法律も出てくる。
名前は似ているが、別物だ。こちらは、タクシー運転者の登録や、指定地域での試験など、運転者個人に関わるルールを定めている。
ざっくり言えば、タクシー特措法は「会社と台数の話」、もう一方は「運転者の話」だ。
| 比較軸 | タクシー特措法(この記事の対象) | タクシー業務適正化特別措置法 |
|---|---|---|
| ひとことで言うと | 会社と台数の話 | 運転者の話 |
| 決めていること | 地域ごとの新規参入・増車・運賃の枠組み | 運転者の登録、指定地域での試験など |
| 主な対象 | タクシー事業者(会社・個人タクシー) | タクシーの運転者 |
2013年改正で両方が見直された
2013年の改正法は、この2つの法律をまとめて改正したもので、運転者の登録制度の拡充も含まれていた。
同じタイミングで見直されたことも、混同されやすい理由の一つかもしれない。
運転者の登録について知りたい場合は、e-Gov法令検索で「タクシー業務適正化特別措置法」を確認してほしい。
出典:参議院「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等の一部を改正する法律案」
2.何のために作られた法律なのか
条文は堅いが、言いたいことは単純だ。
法律の目的(地域公共交通としての機能)
第1条の考え方をかみくだくと、「タクシーは地域の大事な足なので、その役目をきちんと果たせる状態にしておこう」ということだ。そのための流れは、次の3段階になっている。
- 国土交通大臣が、問題のある地域を「特定地域」「準特定地域」に指定する
- 地域の協議会が、改善のための計画を作る
- タクシー事業者が、台数の削減や利用を増やす取り組みを行う
協議会とは、自治体、タクシー事業者、運転者の団体、地域住民などが集まる話し合いの場のことだ。
「供給過剰」とはどういう状態か
この法律を読むうえで、いちばん大事なキーワードが「供給過剰」だ。地域を特定地域・準特定地域に指定するかどうかは、この状態にあるかどうかで決まる。
供給過剰とは、ひとことで言えば「乗りたい人の数に比べて、タクシーが多すぎる状態」のことだ。
台数が多すぎて、客の取り合いになっているイメージでいい。条文では「供給輸送力(タクシーが運べる量)が輸送需要量(乗りたい人の量)に対し過剰であること」と定義されている。
特定地域は「供給過剰」、準特定地域は「供給過剰になるおそれがある」と認められた地域だ。
どちらも、次の3点に照らして判断される(特定地域は第3条、準特定地域は第3条の2)。
- タクシー1台あたりの収入
- 法令違反などの状況
- 事故の発生状況
2013年改正で加わった仕組み
2009年の法律にも、協議会や地域計画の仕組みはあった。2013年の改正で加わった主な仕組みは、次の4つだ。それぞれ次章以降で詳しく見ていく。
- 準特定地域
「多すぎになりそうな地域」を指定する仕組み - 特定地域での新規参入・増車の禁止
特定地域では新しい会社の参入も増車も認めない仕組み - 公定幅運賃
運賃の上限と下限の幅を国が決める仕組み - 独占禁止法の適用除外
認可された特定地域計画に基づく減車の取り組みを、独占禁止法の対象外にする仕組み
国土交通省の資料によると、改正法の施行にあわせて、2014年1月に全国155地域が準特定地域に指定された。
出典:衆議院「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等の一部を改正する法律」/国土交通省「特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法の施行状況及び効果について」(令和6年)
3.特定地域と準特定地域の違い
この二つの区別が、この法律の肝だ。たとえるなら、特定地域は「重症」、準特定地域は「要注意」というイメージになる。
特定地域とは
特定地域は、タクシーが多すぎて、台数を減らさないと地域の足としての役目を果たせない、と国土交通大臣が判断した地域だ。
指定されると、新しい会社の参入も、既存の会社の増車もできなくなる。
さらに、地域の協議会が計画を作り、国の認可を受けたうえで、計画に合意した会社が台数を減らしていく。
準特定地域とは
準特定地域は、「このままだとタクシーが多すぎる状態になりそうだ」と認められた地域だ。
新規参入や増車が一律に禁止されるわけではないが、「増やしても多すぎにならないか」の審査が厳しくなる。
協議会の設置は任意で、準特定地域の計画は、台数を減らすことよりも利用を増やす取り組み(活性化)が中心になる。
会社が活性化の計画を作り、認定を受ける制度もある。
指定の期間と判断の手続き
指定には期限がある(第3条・第3条の2)。期限が来ても、まだ必要だと認められれば延長できる。
特定地域の場合は、指定や延長の際に国の審議会(運輸審議会)に意見を聞く手続きも必要だ(第18条の2)。
判断材料は、2章で触れた「1台あたりの収入」「法令違反などの状況」「事故の発生状況」の3つだ。
比較表(特定地域/準特定地域)
ここまでの違いを一覧にした。違いを押さえておけば、業界ニュースの見え方が変わる。
| 項目 | 特定地域 | 準特定地域 |
|---|---|---|
| イメージ | 多すぎる(重症) | 多すぎになりそう(要注意) |
| 新しい会社の参入 | できない | 通常の審査+「多すぎにならないか」の審査 |
| 増車 | できない | 国の認可が必要 |
| 運賃 | 国が決めた幅の中で設定(公定幅運賃) | 国が決めた幅の中で設定(公定幅運賃) |
| 独占禁止法の適用除外 | 認可された計画に基づく行為に適用あり | なし |
| 協議会 | 設置は任意(削減を含む計画を作成) | 設置は任意(活性化が中心) |
出典:e-Gov法令検索「特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」/愛知県タクシー協会「改正タクシー特措法のポイント」
4.指定された地域で制限されること
タクシーは普段、道路運送法で「新しく始めるには国の許可が必要(許可制)、台数を増やすときは届け出ればよい(届出制)」と決まっている。
指定された地域では、このルールに厳しい制限が上乗せされる。何ができなくなるのかを見ていく。
新規参入(法人タクシーの新規許可)
第14条の2により、営業する区域に特定地域が少しでも含まれていれば、国は新しいタクシー会社に許可を出してはならない。つまり特定地域では、新しい会社が開業できない。
準特定地域では、道路運送法の通常の基準に加えて、「この会社が加わっても多すぎにならないか」という基準もクリアする必要がある。
地域に協議会があれば、その意見も聞くことになっている。
出典:e-Gov法令検索「特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」
増車(事業計画の変更)
すでにある会社も、特定地域では台数を増やせない。
準特定地域では、増車が「届け出」ではなく「認可」(国のOKが必要)になり、会社の収入や法令違反、事故の状況なども審査される。
実例を見てみよう。北陸信越運輸局の令和8年8月31日付の公示では、新潟交通圏について次の数字が示されている。
- 必要車両数(地域に必要とされる台数):568台
- 令和7年度末の車両数:870台
- 増加可能車両数:▲302台
マイナスは「すでに必要な台数より多い」という意味だ。同じ公示では、管内の12区域すべてがマイナスだった(あくまで一つの運輸局の例)。
出典:北陸信越運輸局 公示第47号「準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の需給状況の判断結果について」(令和8年8月31日)
個人タクシーの新規参入と「参入枠」
個人タクシー(1人で1台を運行する形態)は、準特定地域でも、年度ごとに「参入枠」(新しく許可を出す数)が決められている区域がある。
北陸信越運輸局の令和8年度の参入枠は次のとおりだ。
- 新潟交通圏:16件
- 金沢交通圏:10件
- 富山交通圏:4件
- 長野交通圏:1件
- 松本交通圏:0件
令和8年度の申請受付は、5月・9月・翌年1月の各1か月に区切って行われる。
枠や期間は年度・運輸局ごとに変わるので、希望する区域の最新の公示を確認してほしい。
出典:北陸信越運輸局「準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業(1人1車制個人タクシーに限る。)に係る参入枠について」
5.公定幅運賃とは
運賃の決まり方にも、この法律が関わってくる。2章で触れた公定幅運賃の中身を、条文に沿って見ていく。
運賃の範囲を指定する仕組み(法第16条)
特定地域・準特定地域では、国土交通大臣が協議会の意見を聞いたうえで、その地域のタクシー運賃の「上限と下限の幅」を決めて公表する。
これが公定幅運賃だ。各社は、この幅の中で自社の運賃を決める。
幅は、「能率的な経営を行う標準的な会社の、適正な原価に適正な利潤を加えた運賃」を標準に決められる。
特定の客を不当に差別しないことも基準の一つだ。
算定方法は、指定のない地域で使われる自動認可運賃と同じとされている。
範囲外の運賃には変更命令
各社は幅の中で運賃を決め、国に届け出る。
幅から外れた運賃を届け出ると、国は期間を決めて、運賃を変えるよう命じることができる(第16条の4)。
国土交通省の資料でも、下限を下回る運賃での届け出は変更命令の対象になると説明されている。
第16条も、運賃の幅が会社どうしの不当な競争を引き起こさないことを基準の一つにしている。
行きすぎた値下げ競争を防ぐための仕組みと考えればいい。
出典:e-Gov法令検索「特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」/国土交通省「タクシーの運賃制度(自動認可運賃・公定幅運賃)」
6.独占禁止法の適用除外とは何か
名前が物々しいが、中身は「会社どうしで台数を減らす取り組みを、条件つきで認める」という話だ。
減車の協調が問題になり得る理由
独占禁止法は、会社どうしが話し合って価格や供給量を決めるなど、競争をゆがめる行為を原則として禁じる法律だ。一般にはそう理解されている。
ところが特定地域では、多すぎるタクシーを減らすために、地域の会社が協力して台数を減らす必要がある。
これは本来なら、独占禁止法上の問題になりかねない。
そこで、一定の条件を満たす場合に限って独占禁止法を適用しない、という規定(適用除外)が置かれている。
対象は認可された特定地域計画
第8条の4第1項は、国の認可を受けた特定地域計画と、その計画に基づく行為には、独占禁止法を適用しないと定めている。
計画ができて実行されるまでの流れは、次のとおりだ。
- 地域の協議会が、特定地域計画を作る
- 国土交通大臣が、その計画を認可する
- 計画に合意した会社が、自社の計画を作って台数を減らす
裏を返せば、認可を受けていない話し合いや、計画に沿わない行為は対象外だ。
適用除外にならない場合
同じ第8条の4には、「ただし書き」という例外もある。次の場合は、認可された計画に基づく行為でも、独占禁止法が適用される。
- 不公正な取引方法を使ったとき
- その地域の競争を実質的に制限し、乗客の利益を不当に損なうとき
- 公正取引委員会との関係を定めた条文に基づく公示から、一定期間(1か月)がたったとき(一定の場合を除く)
要するに、「認可された計画の範囲で、乗客に不利益を与えないこと」が前提だ。ニュースで減車の話題を見かけたら、この枠組みで読むとわかりやすい。
準特定地域には適用除外の規定がない
この適用除外は、法律の中で特定地域の章にだけ置かれている。
準特定地域にも活性化の計画を認定する制度はあるが、これは利用を増やすための仕組みで、会社どうしで台数を減らす取り組みを独占禁止法の対象外にするものではない。自分の地域がどちらにあたるかで、使える仕組みが違う。
出典:e-Gov法令検索「特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」
自分の営業区域の状況や、会社ごとの台数・働き方の違いを知りたいなら、ドライバー専門の転職支援サービスに相談してみるのも一つの方法だ。
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7.いまの指定状況と、自分の地域の調べ方
数字は時点で大きく変わる。古い記事を鵜呑みにしないことだ。
現在の指定数(令和8年10月現在)
国土交通省の資料によると、令和8年10月現在、準特定地域は134地域、特定地域は0地域だ。特定地域の仕組み自体は法律に残っているが、いま指定されている地域はない。
この数字は、ここ数年で大きく変わってきた。平成30年3月時点では、特定地域が27地域あった。
古い記事の数字と合わないのは、このためだ。今後の変動は、国土交通省や運輸局の公示で確認してほしい。
出典:国土交通省「準特定地域の状況(令和8年10月現在)」/国土交通省「同 施行状況及び効果について」(平成30年3月)
指定は固定ではない
3章で見たとおり、指定には期限があり、定期的に見直されている。準特定地域は、原則として毎年10月1日をめどに、3年を超えない期間で指定される。
運輸局も毎年度、地域の需要と台数のバランスを判断し、その結果を公示している。
基準に当てはまらなくなれば、期限の途中でも解除される。
出典:北陸信越運輸局 公示第72号「準特定地域の指定等について」(平成26年1月27日)
自分の営業区域が対象か調べる手順
タクシーの規制は、市区町村ではなく「営業区域」という単位で行われる。
営業区域とは、タクシーが営業してよい範囲のことで、「◯◯交通圏」のように複数の市町村をまとめた単位になっていることが多い。
次の手順で調べると確実だ。
- 希望する会社の営業区域名を、求人票や会社に確認する
- その地域を管轄する地方運輸局のウェブサイトで、「バス・タクシー」のページを開く
- 「準特定地域」「タクシー特措法」といった言葉で、公示や新着情報を探す
- 公示の日付を見て、最新のものか確かめる
見つからない場合は、会社の採用担当者に営業区域とその指定状況を尋ねる方法もある。
制度をめぐる見方の違い(意見の紹介)
この制度は、立場によって評価が分かれる。以下は、あくまで特定の立場からの意見だ。
- 弁護士事務所のコラム(2025年10月16日付)
指定の基準が平成13年度との比較になっていることや、必要車両数の計算方法を問題視。ドライバー不足が言われる中でも「供給過剰」とされる地域があると述べている - 自交総連
2024年の指定解除に際し、指定基準そのものの見直しにつながることへの懸念を示している
記事を読むときは、事実(条文・公示)と意見を分けて受け止めるのがよいだろう。
出典:國峯法律事務所「不合理規制の例(タクシー特措法)」(2025年10月16日)/自交総連「準特定地域 11地域解除で計135地域に」(自交労働者情報 2024.11.14)
8.ドライバーや転職希望者にとって何が関係するのか
肝心なのは、ドライバーの仕事にどう関わるのかだ。関係する点と、しない点に分けて整理する。
関係しやすい点
まずは、制度と仕事の距離が近いところから見ていく。押さえておきたい点は2つある。
会社の車の枠・運賃・個人タクシーの参入枠
面接などで、会社の車両数や増車の話題が出ることがある。
準特定地域では増車に国の審査があるため、会社の判断だけで自由に台数を増やせるとは限らない。
4章で触れた北陸信越運輸局の公示のように、増加可能車両数がマイナスの区域もある。「増車予定」と聞いたら、営業区域の公示と照らし合わせてみるといい。
準特定地域では、同じ営業区域の会社の運賃は国が決めた幅の中に収まる。
また、将来個人タクシーを考えているなら、営業区域に参入枠があるかどうかが現実的な判断材料になる。
地域の需給を知っておく意味
当社の転職支援者によると、タクシーを辞めた理由として「歩合で稼げなかった」「供給過剰で稼げない」といった声が挙がるそうだ。
2章で触れた国土交通省の資料(令和6年)では、令和5年10月時点で、準特定地域が車両数で見て全国の約82%を占めていた。
このことから、地域のタクシーの需要と台数のバランスは、働く側にとっても知っておく意味のある情報だといえる。
ただし、指定の有無だけで稼げる・稼げないが決まるわけではない。
直接は関係しない点
一方で、条文を見る限り、この法律はドライバー個人の給料や労働時間を直接は定めていない。
5章の公定幅運賃も、決めているのは乗客が払う運賃の幅で、歩合率や保障給は対象外だ。
拘束時間や休息期間は、改善基準告示など別のルールで決まっている。給与は、会社ごとの賃金規程や求人票の条件で決まる。
当社の転職支援者によると、入社後に「保障給が入らない」という相談が寄せられるケースがあるそうだ。
保障給(一定額を最低限保証する仕組み)には、「〇か月間限定」「勤務日数〇日以上」といった条件が付いている場合がある。
「特措法があるから稼ぎやすい(稼ぎにくい)」と一概に言える関係でもない。求人票では、保障給の金額だけでなく、適用期間や条件まで確認しておきたい。
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転職前に確認できること(チェックリスト)
当社の転職支援者によると、タクシーの仕事が合わなかった理由として「聞いていたのと条件が違う」という声が挙がるそうだ。入社前に、次の点を確認しておきたい。
- 希望する会社の営業区域はどこか
- その営業区域は準特定地域か(運輸局の公示で確認)
- 確認した公示の日付は新しいか
- 給与の条件(歩合率・保障給・勤務形態)は求人票でどう示されているか
- 保障給の適用期間や勤務日数などの条件
- 個人タクシーを将来考える場合、営業区域に参入枠があるか
確認する項目は多くない。名前の難しさに怯むより、自分の営業区域の公示を一度見ておくほうが役に立つ。
求人票の条件や営業区域の状況を一人で確かめるのが大変なら、転職支援サービスに相談しながら進めるのもいい。
一人で転職活動を進めるのに迷ったら、ドライバー専門の転職エージェントを頼ってみるのも一つの手だ。
ドライバー業界特有の慣習や各社の実態に詳しい専任のエージェントが、転職活動をサポートしてくれる。
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9.タクシー特措法に関するよくある質問
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タクシーで運賃の値段交渉はできる?
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タクシーの運賃は、乗客と運転者がその場で交渉して決めるものではなく、各社があらかじめ国に届け出た運賃が基本になる。準特定地域では、その運賃も5章で見た公定幅の中で決まっている。
乗客との個別の値引きを前提とした制度ではない。個別のケースの扱いは、管轄の運輸局などで確認してほしい。
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準特定地域の指定が解除されると、どうなる?
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特措法による上乗せの規制がなくなり、道路運送法の原則(新規参入は許可制、増車は届出制)の扱いに戻る。
2024年10月に指定が解除された地域について、自交総連は増車が可能になると伝えている。最新の扱いは、管轄の運輸局の公示で確認してほしい。
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準特定地域と、運転者の登録が必要な「指定地域」は同じもの?
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別のものだ。
準特定地域はタクシー特措法に基づいて国土交通大臣が指定する地域で、運転者の登録に関わる「指定地域」はタクシー業務適正化特別措置法に基づく地域だ。
名前が似ていても根拠となる法律が異なるため、登録が必要かどうかは管轄の運輸局で確認してほしい。
10.まとめ|台数・参入・運賃の枠を決める法律
タクシー特措法は、供給過剰になりやすい地域で、タクシーの新規参入・増車・運賃の枠組みを定める法律だ。この記事のポイントは、次の3つになる。
- 特定地域は新規参入・増車が禁止、準特定地域は審査が厳しくなり、どちらも公定幅運賃が適用される(令和8年10月現在、特定地域は0地域)
- 独占禁止法の適用除外は、認可された特定地域計画に基づく行為に限られる
- 指定状況は運輸局の公示で、給与や労働時間は別の制度と求人票で確認する



名前は堅いが、決めているのは「台数・参入・運賃の枠」だ。知っておいて損はないが、これだけで稼ぎが決まるわけでもない。そこは冷静に見ておけ。








