女性タクシードライバーという働き方は、ここ数年「増加傾向」として紹介される機会が増えている。
一方で、実際にどのくらいの割合を占めているのか、安全面にはどんな備えがあるのか、育児や介護と両立できるのか――そこまで具体的に整理された情報は、まだ多くない。
この記事では、女性タクシードライバーの割合と推移、働くうえでのメリット・注意点、安全面への向き合い方、育児・介護等と両立するための工夫、未経験からの始め方、給料の仕組みまでを、特定の会社の立場に偏らない視点で解説する。

女性でもタクシードライバーとして長く働けるのか……。不安な点を一つずつ確かめてくれ。
- 女性タクシードライバーの実際の割合と、働くうえでのメリット・注意点
- 安全面の不安にどう向き合えばよいか、確認しておきたい実務的なポイント
- 育児・介護等と両立しながら働くための、シフトの組み方等の具体例
1.女性タクシードライバーは実際どのくらいいるのか
まずは、女性ドライバーの人数と割合を全国の統計から確認する。あわせて、地域別の増加率を読むときに気をつけたい点も整理しておく。
全国データで見る女性ドライバーの割合と推移
業界全体で増加が見られる女性ドライバーだが、実際の割合やここ数年の推移はどう変化しているのだろうか。ここでは、最新の全国統計や過去の動き、国の目標値との比較から客観的な実態をひもといていく。
全体に占める割合は5.9%
まず数字から見ていく。全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)の調査によると、令和8年3月末時点の女性タクシー乗務員は全国で1万4,388人、全乗務員に占める割合は5.9%で、いずれも過去最高となった。
増えているのは事実だが、割合で見ればおよそ17人に1人にとどまる。「増加傾向」という言葉から受ける印象に比べると、依然として少数派であることに変わりはない。
コロナ禍での減少と、その後の回復
推移を見ると、令和2年3月末の1万108人から、コロナ禍の影響で令和4年3月末には9,470人まで減少した。その後は回復に転じ、令和6年3月末以降は大きく伸びている。
| 時点 | 女性乗務員数 |
|---|---|
| 令和2年3月末 | 10,108人 |
| 令和3年3月末 | 9,723人 |
| 令和4年3月末 | 9,470人 |
| 令和5年3月末 | 9,673人 |
| 令和6年3月末 | 11,213人 |
| 令和7年3月末 | 13,078人 |
| 令和8年3月末 | 14,388人 |
単純な右肩上がりではなく、減少と回復を経て今の水準にあると押さえておくと、統計の見え方に振り回されにくくなる。
国の目標と比べて見えること
国土交通省によると、「交通政策基本計画」(平成27年2月閣議決定)では、女性ドライバーを2013年度の約6,700人から2020年度に約1万4,000人へ倍増させる目標が掲げられていた。
最新の1万4,388人はこの水準を上回るが、到達したのは目標年度を5年ほど過ぎてからとなる。
なお、全タク連の調査は平成30年から集計方法が変わっており、目標設定時と同じ基準とは限らないため、あくまで目安として見ておきたい。
出典:一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「令和7年度の女性乗務員数の状況について」
地域別の増加率を見るときの注意点
全国的に伸びている女性ドライバーだが、エリアごとに詳しく見ると増加率には差が存在する。高い数値だけに惑わされず、実際の状況を正しくつかむための注意点を押さえておこう。
増加率が高い地域
全タク連の同じ調査では、令和7年3月末から令和8年3月末までの1年間で、滋賀県(24.1%増)、京都府(20.9%増)、福岡県(20.5%増)、大阪府(18.7%増)などの増加率が高かった。
全タク連が運営するタクシー求人サイト「全国タクシーJOBステーション」でも、同じ数値が紹介されている。
ただし、増加率は元の人数が少ないほど大きく出やすい。たとえば滋賀県は54人から67人への13人増で24.1%、大阪府は780人から926人への146人増で18.7%となっている。
地域の状況をつかむには、増加率だけでなく、実際の人数や全体に占める割合もあわせて確認しておきたい。
出典:全国タクシーJOBステーション「女性タクシードライバーが過去最多を更新!急増の理由と「働きやすさ」の実態」
2.女性ドライバーが感じるメリット
女性ドライバーが感じやすいメリットは、働き方の自由度、接客経験の活かしやすさ、未経験からの入りやすさの3つに整理できる。それぞれ見ていこう。
人間関係のストレスが少なく、自分のペースで働ける
タクシー乗務は、勤務時間の多くを一人で過ごすのが特徴だ。上司や同僚との人間関係の摩擦から距離を置きやすく、自分のペースで業務に取り組める点を魅力に感じる人もいる。
隔日勤務を選べば、勤務明けの「明け番」と休日を組み合わせて、まとまった時間を確保しやすい。前職で対人関係やノルマに疲れを感じていた人にとっては、検討材料のひとつになるだろう。
丁寧な接客・気配りが評価されやすい
これまでの社会人経験で培った接客スキルや気配りは、乗務中の接客にそのまま活かせる。乗客の様子を見て声をかけるといった細やかな対応は、利用者からの信頼につながりやすい。
一方で、接客の質だけで収入が決まるわけではない。給料の仕組みは「4.育児・介護等と両立しながら働くための工夫」で解説しているので、あわせて確認しておきたい。
未経験からでも挑戦しやすい仕組みがある
タクシー乗務には、乗客を有償で運ぶための第二種運転免許が必要になる。取得費用を会社が負担する支援制度を設けている会社もあり、学歴や前職に関わらず挑戦しやすい。
全タク連の調査では、女性乗務員は50代が全体の34.1%を占めて最も多く、若い世代に限らず幅広い年代が働いていることがわかる。研修や同乗指導の内容は会社ごとに差があるため、応募前に確認しておくとよい。
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3.安全面・不安への向き合い方
安全面の不安は、会社の設備や体制を事前に確認することで小さくできる部分がある。ここでは、深夜の防犯対策とトラブル時の考え方を取り上げる。
深夜勤務時に一般的にとられている防犯対策
夜間の乗務やワンマン運行に対して「防犯面の不安」を覚える人は少なくない。実務においてはどのような安全装備が導入されているのか、また入社前に確認すべき点とあわせて解説する。
業界で導入が進む主な設備
深夜に一人で乗客を乗せて走ることに、不安を感じる人は少なくないだろう。
対策としては、防犯仕切り板の設置、ドライブレコーダーの搭載、配車アプリによる乗車管理などが挙げられる。
このうちドライブレコーダーは、全タク連の調べで法人タクシーの約92.3%に導入されている(2025年3月末時点)。一方、防犯仕切り板や配車アプリの運用状況は会社によって差がある。
出典:国土交通省 掲載資料「ハイタク事業における総合安全プラン2025 ~フォローアップ~」(全国ハイヤー・タクシー連合会)
入社前に確認しておきたいこと
入社を検討する際は、面接や会社説明の場で、防犯設備の有無や緊急時の対応マニュアルについて具体的に質問するとよい。
説明を聞くだけで終わらせず、実際の運用まで確認しておくと、入社後のギャップを減らしやすくなる。
理不尽な客対応・トラブル発生時の考え方
泥酔した乗客や暴言を吐く乗客への対応は、接客業務に特有のストレス要因として挙げられることが多い。頻度は地域や時間帯によって異なるが、実際に起こり得る場面として想定しておく必要がある。
トラブル時の動き方は、会社の体制によって差が出やすい。無線や配車アプリで本部と連携できるか、迎車依頼を断れる基準がどう定められているかを事前に確認しておくと、いざというときの心構えが変わってくる。
4.育児・介護等と両立しながら働くための工夫
育児や介護と両立するには、勤務形態、収入の仕組み、会社の相談体制の3点をあわせて考える必要がある。順番に確認していく。
シフトの組み方の選択肢(隔日勤務・日勤専属等)
子どもの送迎や学校行事、家族の介護がある人にとって、シフトの組み方は働き続けられるかどうかを左右する要素だ。
国土交通省も、タクシードライバーは働き手に合わせた柔軟な勤務時間を組みやすく、環境を整えれば子育てと両立できる職業だとしている。
| 勤務形態 | 特徴 | 両立を考えるうえでの視点 |
|---|---|---|
| 隔日勤務 | 1回の勤務が長時間となる代わりに、まとまった休日(明け番)を確保しやすい | 平日日中にまとまった時間を取りやすい一方、体調管理への配慮が必要 |
| 日勤専属 | 勤務時間が比較的短く、生活リズムを一定に保ちやすい | 夜勤がなく家庭の予定に合わせやすいが、収入は隔日勤務と差が出る場合がある |
| 短時間勤務(定時制・パート) | 繁忙時間帯などに限って短時間だけ乗務する | 送迎や介護の合間に働きやすいが、導入している会社はまだ限られる |
全タク連が運営する求人サイトのコラムでは、日勤中心や短時間勤務の求人が広がりつつある一方、業界全体ではまだフルタイム勤務が中心だとされている。
求人を見る段階で、勤務形態の選択肢がどの程度用意されているかを確かめておくことが、両立を考えるうえでの第一歩になる。
歩合制の収入変動と両立を、あわせて考える視点
タクシー業界の給与形態に多い歩合制は、稼働状況が収入に直結しやすい仕組みになっている。家庭事情による欠勤の影響や年収の相場、確認しておくべき給与手当などのポイントを把握しておこう。
欠勤が収入に直結しやすい構造
育児・介護と両立していると、急な欠勤が必要になる場面は避けにくい。
参議院の調査資料によると、厚生労働省の委託調査(令和2年度)では、タクシー運転者の9割以上に歩合給が適用されていた。天候や体調不良で稼働が減ると、そのまま手取りの減少につながりやすい構造だ。
出典:参議院常任委員会調査室・特別調査室「連載:担い手②タクシー輸送の担い手の確保とその在り方」
平均年収の目安
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、タクシー運転者(男女計)の年間賃金推計額は450万8,200円だった。全タク連が運営する求人サイトのコラムによれば、前年より8.7%増えたものの、全産業平均の545万5,600円は下回っている。
同じ調査のデータを男女別に見ると、次のようになる。年間賃金は、毎月決まって支給される給与の12か月分に年間賞与を加えて算出した。
| 区分 | 年間賃金(推計) | 平均年齢 |
|---|---|---|
| 男女計 | 450万8,200円 | 56.8歳 |
| 男性 | 454万4,800円 | 57.3歳 |
| 女性 | 393万3,300円 | 50.0歳 |
女性の年間賃金は、男性より60万円ほど低い。ただし、調査対象となった女性のタクシー運転者は推計で約1万人と男性の15分の1ほどにとどまり、勤続年数や勤務形態の違いも反映されるため、数字の差がそのまま性別による差とは言い切れない点に注意したい。
いずれも歩合給を含む平均値で、個人差は大きい。自分の働き方での収入は、応募先に実例を聞いて確かめたい。
出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「令和7年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)、性別の統計表(第1表)
出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「タクシー運転手」
出典:全国タクシーJOBステーション「タクシー運転手の年収は本当に低い?統計データから見る「本当の収入」の実態」
控除項目と給与保証も確認しておく
求人票の歩合率だけでは、実際の手取りは判断しにくい。無線や配車アプリの利用料などを乗務員の給与から差し引く項目があるかを、給与明細の例などで確認しておきたい。
稼働が減った月の収入をあらかじめ試算しておくとともに、研修期間中の最低保証など、給与保証制度の有無も判断材料にしたい。
両立を続けるうえで直面しやすい壁
家庭と仕事を並行して成り立たせる過程では、さまざまな負担や悩みが生じる場合がある。現実的な体力面の課題や、職場との相談環境の重要性についてチェックしてみよう。
体力面とシフト調整の負担
両立を続けるなかでは、体力面の負担やシフト調整の交渉に難しさを感じる場面もある。長時間の運転による身体的な負担は職業全体で指摘されており、時間のやりくりが重なるほど負担を感じやすくなる可能性がある。
なお、両立している女性ドライバーに特有の負担を直接示すデータは確認できていない。一般的な傾向として捉えておくのが実態に近いだろう。
相談できる体制があるか
無理なく働き続けられるかどうかは、時短勤務や勤務日数の相談に会社がどこまで応じてくれるかで大きく変わる。
面接の段階で、実際にシフト変更を相談した例があるかを聞いておくと、会社の姿勢を判断しやすくなる。
5.未経験から始める場合に確認しておきたいポイント
未経験から始める場合は、免許取得の支援制度、独り立ちまでの期間、会社選びの視点が主な確認ポイントになる。
二種免許取得支援制度の有無
未経験者にとって最初のハードルになりやすいのが、第二種運転免許の取得だ。取得費用を会社が負担する支援制度があれば、費用面の不安を抑えながら挑戦しやすくなる。
ただし、支援の内容は会社ごとに差がある。全額負担か一部負担か、一定期間内に退職した場合に費用の返還を求められる規定があるかは、事前に確認しておきたい。
独り立ちまでの期間と、その間の収入の見通し
面接から免許取得、同乗研修などを経て一人で乗務できるようになるまでには、数か月程度かかるのが一般的だ。期間は免許の取得方法や研修内容によって前後するため、応募先に目安を確認しておきたい。
この期間は研修中の給与水準にとどまるため、収入がすぐに満額になるわけではない。育児・介護と両立しながら転職する場合は特に、収入が下がる期間を家計にどう織り込むかを事前に試算しておくと安心だ。
会社選びで見ておきたい視点
未経験から安心してキャリアをスタートするには、自社に合った環境を見極めることが欠かせない。給与条件だけでなく働きやすさに直結する要素や、複数社を比較検討する際のポイントを整理していく。
働きやすさを左右する条件
同じタクシードライバーでも、働きやすさは会社によって大きく異なる。歩合率の水準、各種手数料の有無、事故時の修理代の自己負担の有無、配車アプリの導入状況は、実際の働きやすさを左右する具体的な視点だ。
女性ドライバーとして働くうえでは、防犯設備や緊急時の対応体制、シフトの相談のしやすさも確認しておきたい項目だ。
複数の会社を比べて判断する
求人票の情報だけで判断せず、面接や説明会で気になる点を率直に質問することが、入社後のミスマッチを減らすことにつながる。
同じ質問を複数の会社に投げかけて回答の具体性を比べてみると、会社ごとの姿勢の違いが見えやすくなる。
6.女性タクシードライバーに関するよくある質問
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第二種運転免許は何歳から取得できますか?
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原則は21歳以上で、普通免許等を受けていた期間が通算3年以上必要だ。
令和4年5月13日からは、教習所で「受験資格特例教習」を修了すれば、19歳以上・保有期間通算1年以上で受験できるようになっている。最新の要件は警察庁や各都道府県警察のサイトで確認してほしい。
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東京や大阪でタクシードライバーになるには、地理試験に合格する必要がありますか?
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一部の地域でタクシー運転者の登録時に課されていた地理試験は、令和6年2月29日の省令改正で廃止されている。
現在は受験の必要はないが、道を覚えるための社内研修の内容は会社によって異なるため、応募時に確認しておきたい。
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女性が働きやすいタクシー会社を見分ける、公的な目安はありますか?
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国土交通省の「女性ドライバー応援企業」認定制度がある。女性ドライバーの雇用目標の設定、働きやすい施設・勤務形態の整備、労働環境に関する情報の公表といった基準を満たす事業者が認定され、同省のサイトで紹介されている。
応募先を比べる際の参考のひとつになる。
7.まとめ|女性タクシードライバーは会社選びで働きやすさが変わる
女性タクシードライバーという働き方について、実際の割合から安全面、育児・介護との両立、未経験からの始め方までを見てきた。ポイントは次の3つだ。
- 女性ドライバーは過去最多の1万4,388人だが、割合は5.9%でまだ少数派
- 安全面は、防犯設備や緊急時の対応体制を面接で具体的に確認する
- 両立を考えるなら、勤務形態の選択肢と給与保証制度を事前に確かめる



女性ドライバーで一番多い年代は50代だ。年齢や未経験を理由にあきらめる前に、条件の合う会社を探してみる価値はある。




