タクシー運転手を目指して二種免許を調べると、「深視力」という聞き慣れない検査にぶつかる。
二種免許の深視力検査は、3本の棒で奥行きの距離感を測るもので、3回の平均誤差が2センチメートル以下であることが基準だ。
この記事では、検査の内容と基準、取得時と更新時の扱い、苦手な人の準備、基準に届かなかったときの選択肢を、法令と警察の公式情報をもとに整理する。

「視力は大丈夫なのに、深視力で落ちたらどうしよう」――その不安は、基準の中身を知れば小さくできる。順に見ていこう。
- 二種免許の深視力検査の内容と、合格基準の考え方
- 取得するときと更新するときの扱い、苦手な人の準備
- 基準に届かなかったときの選択肢
1.二種免許の深視力とは?先に結論
結論から言うと、深視力は奥行きの距離感を測る検査で、二種免許の適性試験の科目の一つだ。視力とは別に確認される。
深視力は、奥行きの距離感を測る検査
深視力とは、ものが手前にあるのか奥にあるのかといった、奥行きや立体感を目で捉える力のことである。
ふだんの視力検査が「どれだけはっきり見えるか」を調べるのに対し、深視力は「距離の差をどれだけ正確に判断できるか」を調べる。
そのため、視力が出ていても、深視力の検査では結果が分かれることがある。
二種免許の適性試験の中での位置づけ
二種免許を取るときは、学科試験や技能試験のほかに、体の状態を確かめる「適性試験」がある。
道路交通法施行規則第23条では、適性試験の科目として、視力・色彩識別能力・深視力・聴力・運動能力が定められている。第二種免許の基準は次のとおりだ。
| 科目 | 第二種免許の基準(要旨) |
|---|---|
| 視力 | 両眼で0.8以上、かつ一眼でそれぞれ0.5以上(矯正視力を含む) |
| 色彩識別能力 | 赤色・青色・黄色の識別ができること |
| 深視力 | 三桿法の奥行知覚検査器で2.5メートルの距離から3回検査し、平均誤差が2センチメートル以下 |
| 聴力 | 10メートルの距離で90デシベルの警音器の音が聞こえること(補聴器による聴力を含む) |
| 運動能力 | 運転に支障のある身体の障害がないこと(条件を付す場合あり) |
視力は矯正視力を含むため、眼鏡やコンタクトレンズを使って基準を満たせばよい。視力だけを気にしていた人も、深視力が基準の一つとして並んでいることは知っておきたい。
なお、検索すると「原付2種」の視力基準も出てくるが、これはバイクの区分の話で、タクシーの運転に必要な第二種免許とは別のものである。
2.合格基準は「3回の平均誤差が2センチ以下」
基準の数字は短いが、読み方に一つクセがある。検査の進み方と、「3回の平均」の意味を確認しよう。
三桿法の検査はこう進む
深視力の検査は、「三桿法(さんかんほう)」と呼ばれる方法で行われる。
検査器をのぞくと、3本の棒が見える。左右の2本は動かず、真ん中の1本だけが前後に動く。
受ける人は、真ん中の棒が左右の棒と横一列に並んだと感じたところでボタンを押し、棒を止める。
止めた位置と、並ぶべき位置とのずれが「誤差」だ。これを3回行う。
「3回の平均」とは|計算例で確認
基準は、1回ごとの誤差ではなく、3回の平均である。大阪府警が示している例を見ると、イメージがつかみやすい。
| 3回の誤差 | 平均 | 結果 |
|---|---|---|
| 2cm・4cm・0cm | 2.0cm | 合格 |
| 2cm・3cm・2cm | 約2.3cm | 不合格 |
上の例では、1回だけ4センチずれても、ほかの回が小さければ平均が2.0センチになり、基準を満たす。
反対に、どの回も2〜3センチ程度と近い値でも、平均が2センチを超えると基準に届かない。
1回のズレに一喜一憂するより、3回を通して安定させる意識のほうが現実的だ。
3.深視力が必要な免許と、二種免許で求められる理由
どの免許が対象なのかは、意外と混同されやすい。深視力の基準がある免許とない免許、そして二種免許で見え方が重視される理由を整理する。
必要な免許と、基準が示されていない免許
深視力の基準が定められているのは、大型免許・中型免許・準中型免許・けん引免許・第二種免許である(大型・中型・準中型の仮免許も対象)。
第二種免許には、普通二種・中型二種・大型二種のいずれも含まれる。タクシー乗務員が取る普通二種も対象だ。
一方、大阪府警や埼玉県警のページでは、8トン限定の中型免許、5トン限定の準中型免許、普通免許、原付免許などについて、深視力の基準は示されていない。普通免許の更新で検査を受けた覚えがないのは、このためである。
出典:大阪府警察「免許の種類と視力等の基準」、埼玉県警察「運転免許更新時における適性検査」
二種免許で見え方が重視される理由
深視力は遠近感や立体感を確かめる検査であり、運転では距離感を使う場面が多くある。
タクシーは、お客様を乗せて走る仕事だ。狭い道ですれ違うとき、駐車車両の横を抜けるとき、前の車との間隔を保つときなど、距離感を使う場面は毎日ある。
そうした仕事の性質から、二種免許では深視力も基準に含まれていると捉えると理解しやすい。
4.深視力検査はいつ受ける?取得時と更新時
深視力の検査は、一度通れば終わりではない。取得するときと更新するとき、それぞれの扱いを見ていく。
取得するとき
二種免許の取得では、適性試験の一部として深視力が確認される。
教習所に通う場合は、入校の段階で確認する教習所もある。教習所の案内には、通常の視力が基準を満たしていても深視力が基準に届かないと入校できない、と説明しているところがある。
どの段階で検査するかは教習所によって異なるため、申し込みの際に確認しておこう。
更新するとき
免許の更新時にも適性検査があり、埼玉県警のページでは、適性検査に合格しない場合は更新できないと案内されている。
第二種免許の更新では、視力と深視力の基準が確認される。運転を仕事にし続ける限り、更新のたびに基準と向き合うことになる。
見え方は年齢や生活の中で少しずつ変わることがあるため、更新の前に眼鏡の度数や見え方を確かめておくと、当日慌てずに済む。
5.深視力が苦手な人の準備
苦手だと感じていても、打てる手はある。眼鏡やコンタクトの度数、練習の考え方、眼科への相談と当日の体調。この3つに分けて整理する。
眼鏡・コンタクトの度数を見直す
視力は問題ないはずなのに不安がある、という場合は、まず今の眼鏡やコンタクトの度数が合っているかを確かめてみてほしい。
1章で見たとおり視力は矯正視力で判定されるので、眼鏡やコンタクトで見え方を整えて検査に臨むことが基本になる。
また、教習所の中には、乱視がある人や、左右の度数が大きく異なる人は深視力が出にくい傾向がある、と説明しているところもある。心当たりがあれば、眼鏡店や眼科で自分の見え方を確認してみるといい。
練習の考え方|手順と感覚に慣れる
初めて機械をのぞく人は、棒がどう動くのか、どのタイミングでボタンを押すのかという手順そのものに戸惑いがちだ。
方法としては、動画で検査の流れを見ておく、深視力の測定を行っている眼鏡店で試してみる、といったものがある。測定を行っているかどうかは店舗によって異なるため、事前に問い合わせてほしい。
練習で結果が約束されるわけではないが、手順と感覚に慣れておくことで、本番の緊張を和らげる助けになる場合がある。
眼科で相談する目安と、当日の体調
見えにくさを感じる、目の疲れが続く、といった場合は、練習を重ねる前に眼科で相談することをおすすめする。見え方の状態を調べ、診断や治療の必要があるかを判断するのは医師の役割だ。
当日の体調も、結果に影響することがある。検査の前日は、目を休める時間を意識して取っておくとよい。
一人で転職活動を進めるのに迷ったら、ドライバー専門の転職エージェントを頼ってみるのも一つの手だ。
ドライバー業界特有の慣習や各社の実態に詳しい専任のエージェントが、転職活動をサポートしてくれる。
▶カラフルエージェント ドライバーへのお問い合わせはこちら
6.基準に届かなかったときの選択肢
できれば考えたくない話だが、先に知っておいたほうが気持ちは楽になる。更新のときと取得のとき、それぞれの扱いを確認しておこう。
更新のとき|第一種免許で更新
更新の際に第二種免許の視力・深視力の基準に達しない場合、埼玉県警のページでは、基準を満たす普通免許や第一種免許で更新することになる、と案内されている。
第一種免許での更新になると、旅客を運送する目的でタクシーを運転することはできなくなる。
見え方に不安を感じ始めたら、更新の直前ではなく、早めに眼科や住んでいる地域の運転免許センターに相談しておきたい。
取得のとき|再検査は事前に確認
取得時に深視力の基準に届かなかった場合、その場で再検査を受けられるか、後日改めて受けるのかといった扱いは、教習所や試験場によって異なる可能性がある。
不安があるなら、申し込み前に「基準に届かなかった場合はどうなるか」を直接尋ねておくと、見通しが立つ。眼鏡の度数を見直した後に受け直せるのか、といった点もあわせて聞いておくといい。
7.二種免許取得に必要な深視力に関するよくある質問
-
深視力の検査は、眼鏡やコンタクトをつけたまま受けられる?
-
埼玉県警の案内では、深視力は「視力(深視力)」として視力と同じ項目にまとめられており、視力が基準に達していない場合は眼鏡等で矯正することになるとされている。
ふだん眼鏡やコンタクトで運転している人は、検査の当日も忘れずに着けていこう。
-
色を見分ける検査(色彩識別)は、普通免許を持っている人や更新のときにもある?
-
道路交通法施行規則第23条第2項では、受けようとする免許と異なる種類の免許をすでに受けている人には、色彩識別能力の試験を行わないと定められている。警視庁も、現に免許を受けている人や更新手続の人には行わないと案内している。
つまり、普通免許を持っている人が二種免許を取る場合、色彩識別の試験は行われない。埼玉県警の更新時の適性検査のページでも、合格基準は視力(深視力を含む)・聴力・運動能力の3項目だ。
8.まとめ|二種免許の深視力は基準を知り、早めに準備しよう
二種免許の深視力は、タクシーを目指す道の入口にある関門の一つだ。最後に、押さえておきたいポイントを振り返っておこう。
- 基準は、三桿法で3回測った平均誤差が2センチメートル以下。1回ごとのズレではなく平均で判定される
- 深視力は取得するときだけでなく、更新のたびに適性検査で確認される
- 苦手なら眼鏡の度数の見直し・手順への慣れ・眼科への相談で備え、基準に届かなかったときの扱いは受ける場所に確認しておく



焦らず、順番に片づけていけばいい。








